アップロード300話達成・記念特別編集



第12話  「さらば!七曲署」





坂口画廊
  辺りはすっかり日が暮れた頃、井川刑事とマミーは、捜査の結果被害者との顔見知りと判明した画商の坂口を訪ねていた。
坂口 「竹内が殺されたことはニュースで聞きました。それで、私のことをどこでお知りになりました。」
マミー 「被害者(ガイシャ)の住所録に書いてあったもんですから。」
坂口 「ははー、なるほど。」
  待たされていた井川刑事・マミー、二人の刑事の目の前に坂口が座ったその時、部屋の扉が開いて坂口の会社の社員が入ってきた。そしてその男性は坂口の前で立ち止まった。
  坂口の社員 「社長、それじゃ私は。」
  坂口 「ああ、ご苦労さん。」
  社長である坂口に挨拶を済ませたその男性は、刑事たちにも一礼すると足早に部屋を出ていった。
  井川刑事 「坂口さん、被害者(ガイシャ)とは、どういうご関係だったんですか?。」
  坂口 「あっ。」
  マミー 「画商をなさっているという点からいいますと、被害者(ガイシャ)が元画家だということはご存知ですよね。」
  坂口は刑事たちの質問に即答せず、まず上着のポケットからタバコを取り出すと口にくわえ、タバコに火をつけて一服吸込むと大きくため息を吐いた後、ようやく答え始めた。
その様子を二人の刑事は、目をそらさず見ていた。
  坂口 「えぇ、彼が画家だったころからの付き合いです。えー、ここにもしょっちゅう顔を出してました。」
  その時、先程の社員が出ていったのとは別の部屋から、バーンと大きな物音がした。
  井川刑事 「あれ、まだ、誰かいるんですか?。」
  井川刑事は坂口にそう尋ねると、すっと座っていたソファーから立ちあがった。
  坂口 「いや、誰もいません。」
  そう答える坂口だったが、井川刑事は構わず物音がした部屋のほうへ歩いていくとドアノブに手を描けた。
  井川刑事 「不用心ですな。失礼。」
  井川刑事はドアを開け、部屋の中に入っていった。
真っ暗闇のその部屋の中には、多数の絵が置かれていた。そしてその部屋に入ると外を走る足音が・・・。井川刑事がその暗闇の部屋のブランドの隙間から外を覗いてみると、スーツ姿の男が2枚の絵を小脇に抱え走り去っていき、付近の置いてあったライトバンに乗るとそのままどこかへ行ってしまった。
[品川・52 は・9160]男が乗っていった車のナンバーだ。
 
画商・坂口の自宅マンション前の道路に停車中、覆面車
  翌朝、井川刑事、マミー、マイコンは、坂口を不審に思い、自宅マンション前の道路で張込んでいた。
  マイコン 「画商と元画家か。」 
  井川刑事 「で、車の持ち主は判ったのか?。」
  マイコン 「はい、ナンバー9160のグレーのワゴンの持ち主は、都内に6人いました。手分けしてあたったんですが・・・、その中に一人、引っ掛かる人物がいるんです。小田恭三・46歳、美術ブローカーで詐欺の前科があります。」 
 
小田恭三の事務所
  その頃、その小田恭三の事務所へは、喜多刑事とブルースが向かっていた。二人は車で駆けつけると、ビルの中にある小田の事務所へ向かった。
事務所のドアを開けようとドアノブを廻すがカギが掛かっているようだ。ブルースは2・3回、大きな音でそのドアをノックした。
  事務所の中の男 「誰!?。」
  喜多刑事  「小田さんに、聞きたいことがあるんですけどね。」
  事務所の中の男 「社長なら留守だよ、また来な!。」
  扉を開け、顔覗かせた事務所の男はそう言ってすぐに扉を閉めようとするが、その瞬間、ブルースが閉まりかけた扉を足で蹴って入っていく。
  事務所の中の男 「何すんだい!。このやろ。」
  二人の刑事がずけずけと部屋の中に入っていくと、事務所の中には4・5人の男たちがいた。
  喜多刑事 「小田社長は奥かな?。」
  そう言って喜多刑事が指を差す先は、ガラス張りのパーテーションで事務所を区切ってある部屋があった。
騒ぎを聞いて、その奥の部屋からまた別の男たちが事務所の方に出てきた。
  小田の事務所の男B 「何!。」
  奥の部屋からは二人の男が出てきて、刑事たちの方へ歩み寄ってきた。
  ブルース 「警察だよ。」
  ブルースはその男たちをかき分け奥の部屋へ向かうと、再び扉を足で蹴り部屋の中に入っていったが、そこには誰も姿もなかった
ブルース 「なんだ、ホント留守かよ、おい。」
小田の事務所の男 「だから言ったじゃねえか。」
喜多刑事 「まあいいや。用があるのは、君たち。」
  小田の事務所の男 「あん?。」
  ブルース 「昨日の夜、坂口画廊から飛びだして行った奴、誰だ。」
  小田の事務所の男 「坂口画廊?、知らねえな。」
  小田の事務所の男C 「夕べ残業で、全員ここに居ましたよ。」
  喜多刑事 「あっそう。それじゃしょうがねえ、靴の底見せてもらおうかな。」
  小田の事務所の男B 「靴の底?。」
  喜多刑事 「そ、夕べな、あのビルの入り口で慌てて犬のウンチ踏んづけしゃったバカがいるんだよな。」
  それは喜多刑事の引っ掛け、つまり誘導作戦だった。
  小田の事務所の男D 「えぇー。」
  まんまとその男は喜多刑事の誘導作戦に引っ掛かり、思わず右足を持ち上げると靴の底を覗きこんだ。
  喜多刑事 「ほーら引っ掛かったお前、トンチキ。」
  小田の事務所の男D 「くそー。」
  小田の事務所の男C 「やっちまえ!。」
  その掛け声で、小田事務所にいた男たちは、一斉に喜多刑事とブルースに襲いかかってきた。
二人の刑事は大暴れし、次々と襲ってくる事務所の男をなぎ倒していった。パーテーションのガラスも飛び散り、一瞬の内に事務所の中は破壊されていく。
その時、隙を見て昨夜画廊から飛び出していった男が事務所の控え室に逃げ込み、非常口から外の非常階段へと逃走した。それに気がついたブルースはその男を追った。
 
小田の事務所ビルの非常階段
  非常階段を昇り、男は必死に逃げていったが、ブルースに追いつかれ、捕まってしまった。
  ブルース 「おい、坂口画廊とテメエ、どういう繋がりだ!。」
  小田の事務所の男D 「知しらねえ。何も関係ねえよ。」
  ブルース 「なんだとー。」
  白を切るその男をブルースは持ち上げた 。すると、とのまま男の上半身を非常階段の手すりの向こうに押し出し、その手すりから男を宙づりにして脅しを掛け始めた。突然のことに男は驚き、奇声を上げた。
  小田の事務所の男D 「あ、あー止めろ、人殺しー。あっ、助けてくれー。」
  ブルース 「おっ、おおぉ、手を放したら動くから落ちるよ。」
  小田の事務所の男D 「うぁー、止めてくれー。」
  事務所の中での大暴れで疲れたのか、非常階段をしんどそうに喜多刑事が上がってきた。
  喜多刑事 「うわー、シンドイなー、おい。」
  そして、男を宙づりにしているブルースの後ろ手につくと、ブルースの肩を叩いて呼んだ。
喜多刑事 「おぉ!。」
ブルース 「はい!。」
喜多刑事 「まあ、一服いかねえか、一服。」
ブルース 「あぁいいですなー、どうも。」
  ブルースは喜多刑事がいる後ろを振向き、差し出すタバコを取るため、宙づりにしている男を捕まえているその左手を離した。すると不安定になった男の身体が下にブレた。
  ブルース 「おおぉ。」
  小田の事務所の男D 「うぁー、わっ分かった、分かった。喋るから降ろしてくれー。」
  ブルースの脅し作戦は成功。ヒビッた男は簡単に、口を割ると言い出すのだった。
ブルースと喜多刑事は宙づりになっている男を引上げた。引上げられた男は今の恐怖心から、大きく息を切らしながら刑事たちに答えた。
  小田の事務所の男D 「坂口画廊とは、仕事上の付き合いです。」
  喜多刑事 「あっそう。それじゃ何で絵を持ち出したんだ。」
  小田の事務所の男D 「そりゃー、社長に言われて。」
  ブルース 「社長!、小田社長か?。何の為にだよー。」
  小田の事務所の男D 「し、知りません。」
  ブルース 「知らんじゃ、すまんだろうが。落ちてすっきりするか?。」
  そう言うとブルースは持っていたタバコを喜多刑事に預け、再び男を非常階段の手すりから宙づりにした。
  小田の事務所の男D 「ホントに俺は何も知らないんです。助けてくれよー。降ろしてくれよー。」
  男は宙づりにされたまま、今にも泣き出しそうな声を上げた。
  小田の事務所の男D 「ホント、ホント、本当に俺は何にも知らないんだってばー。」
  喜多刑事 「おい、この男知ってるか?。」
  喜多刑事は胸ポケットから写真を取り出し、宙づりにされている男にその写真を見せた。
ところが男は逆さまになっている。
  喜多刑事 「あぁ、こうか。」
  そう言うと、持っていた写真を逆さまに持ち替えて、再び男の目の前に出した。
  小田の事務所の男D 「うぁー助けてー。」
  宙づりにされているその男に写真など見る余裕も無かった。男は恐怖心から目を瞑り、必死にもがいてただ刑事たちに命乞いをするのが精一杯な状況だった。
  喜多刑事 「おい、降ろせ、降ろせ、降ろせ。」
  喜多刑事に言われて、ブルースは男を引上げた。
引上げられた男は完全に足が竦み、ハァハァと息を切らしてそこに座り込んでしまった。
喜多刑事は再び、まだ動揺しているその男の目の前に写真を差し出した。その写真は殺された竹内の写真と、第一発見者である篁係長の息子・清文の二人の写真である。
  喜多刑事 「おい、この男知っているか?。」
  小田の事務所の男D 「いえ、知りません。」
  喜多刑事 「知らない?。」
  ブルース 「ホントか、こりゃ!。」
  小田の事務所の男D 「ほ、ホントです。ただ、こっちの奴は知ってます。」
  脅えながらもそう答えたその男の指は、清文の写真を指していた。
 
KEIO PLAZA HOTEL の喫茶ルーム
  喜多刑事とブルースは、坂口画廊から絵を持ち出したその男に社長の小田の居る場所を聞き出して、外出していた小田の居る KEIO PLAZA HOTEL に急行した。刑事たちはそこの喫茶ルームで小田と会って話を聞いた。
小田 「先週の土曜日ですか?。えぇ、確かにVIPに行きました。それが何か?。」
喜多刑事 「その時・・・、貴方この男と一緒でしたね。」
喜多刑事が内ポケットから出して小田に見せた写真は、清文の写真だった。
小田 「ええ、東亜証券にお勤めの青木さんでしょう。坂口さんに紹介されて会ったんです。」
  喜多刑事 「坂口!?。」
  小田 「ええ、お客様を紹介して頂こうと思いましてね。東亜証券の方なら、お顔を広いでしょう。」
  ブルース 「ほぉー。」
  喜多刑事 「それじゃこの男が、坂口の知り合いって訳ですか?。」
  小田 「えーなんでも、竹内という昔馴染みの元画家の人に紹介されたって言ってましたよ。」
  喜多刑事 「あーそうですか。それじゃ夕べ坂口画廊から絵を取ってこさせた訳は?。」
  小田 「あっ、あれは坂口さんが絵の代金を払わないので、実力行使に出ただけです。」
  小田は終始にこやかに、喜多刑事の質問に答えた。