アップロード300話達成・記念特別編集



第12話  「さらば!七曲署」





翌日、捜査一係室
翌日、一係では昨日の竹内殺しの捜査会議が開かれていた。
オサム 「解剖の結果によると、死亡推定時刻は夕べの6時半前後、死因は頭蓋骨骨折を伴う脳挫傷です。」
ブルース 「凶器は発見できませんでした。犯人(ホシ)の遺留品と思われるものも、見つかりませんでした。」
  マイコン 「指紋は竹内さん本人のものがいくつか検出されたんですけど、前科者に該当するものはありません。」
  DJ 「あっ、それでそこに茶碗があるでしょ。その茶碗から取った清文さんの指紋も、その中に含まれてます。」
  篁係長 「どこに残ってたの?。」
  DJ 「あっ、指紋ですか?。えー、表胴のー、表胴とその中の取っ手の部分です。」
  ドック 「係長、その被害者(がいしゃ)の竹内さんなんですけど、ちょっと、引っ掛かる部分あるんですよ。」
  マミー 「近所の人の話しだと、ほとんど仕事らしい仕事、してなかったって言うんです。店も閉まっている方が多いって言ってるぐらいですから。あっ、あのー、出身地は青森県八戸市です。今、詳しい経歴や交友関係を照合しています。」
  捜査報告を聞いていた篁係長であったが、重苦しい表情で口を開いた。
  篁係長 「今のところ容疑者は、清文だけと言うことね。」
  マイコン 「係長・・・。」
  DJ 「いやー、まあー、それはあのー、第一発見者ですから、そうやって疑うのも当然ですけど。」
  篁係長の突然の言葉に、若い刑事たちが気持ちを察してか口を挟むが、篁係長は自ら確信している言葉を吐いた。
  篁係長 「あの子は嘘をついてるわ。」
  ドック 「嘘!。」
  篁係長 「私には分かるの。刑事としてよりも、母親としてのかんでね。」
  突然出た篁の発言に、一係の刑事たちは皆、当然のごとく驚いたのだった。
  DJ 「でも係長、彼は凶器なんか持ってませんでした。」
  マミー 「ええ、それに、コートに着いていた血も、死体を抱きかかえれば自然に着く範囲の量だって鑑識も言ってますし、係長の思い過ごしじゃないでしょうか。」
  オサム 「いや、それはなんとも言えないんじゃないのかな。」
  マミー 「えぇー。」
  オサム 「凶器だったら近くのどぶ川に捨てることも出来るし、死亡推定時刻と息子さんが該者を訪問した時刻が一致する点、その辺がちょっと気になります。」
  篁係長 「喜多さんの言う通りだわ。水木さんと一緒に、青木清文を調べて下さい。手加減は一切無用です。」
  オサム 「分かりました。」
  篁係長の指示の元、刑事たちが捜査に取り掛かろうとしたその時、ドック(神田正輝)が篁係長に聞いた。
  ドック 「係長!。捜査に掛かる前に、係長の離婚の経緯話してもらえませんか?。」
  マミー 「ドック!。」
  DJ 「ドック!。」
  ドックの突然出た言葉に他の刑事たちは篁係長に気を遣い、ドックを静かに攻めた。しかし、ドックは続けた。
  ドック 「いや、プライベートなことなんで、我々が知る必要はないと思ってきました。でもこうなると話しは違います。少なくとも息子さんが容疑者の一人である以上は・・・。」
  ドックは篁係長に、質問の意図を説明した。そして篁係長は一呼吸おくと、ドックに答えるのだった。
  篁係長 「・・・・・・、分かりました。私が清文の父・青木と結婚したのは、昭和36年の春です。」
  DJ 「昭和36年?。俺、生まれてなえなー。」
  ブルース 「チっ!。」
  無関係な合いの手を入れるDJ。隣の席のブルースは、DJを睨らみ話を止めさした。そして篁係長は話しを続けた。
篁係長 「当時私は警察庁の保安関係の仕事をし、青木は財務省に勤めてました。清文が生まれたのは、その明くる年の春です。それから10年間、家庭と仕事を何とか両立させてきたんですけど、私が現場の捜査担当を希望して城西署の少年課に移ってから、青木との仲がおかしくなったんです。」
マミー 「それはやはり仕事が忙しくなって、家庭のことがおろそかになったからですか?。」
  篁係長 「ええ、青木は家庭に父親が二人は要らないって言いました。昭和52年に協議離婚しました。その時清文は15歳で、青木に引き取られました。」
  井川刑事 「それは、清文くん自身の意志だったんですか。」
  篁係長 「そうです。あの子も父親のような母親は、嫌だったんでしょう。清文はその後、東大の経済学部を出て東和証券に就職し、青木は3年後に再婚して、今は財務省の時間やってます。」
  ブルース 「でっ、そのー、再婚相手っていうのは?」
  篁係長 「旧姓・松井美沙子さんっておっしゃって、実家は横浜の開業医。前のご主人は交通事故で亡くなったって聞いてます。・・・以上です。」
  部下に初めて話した自分の過去、刑事たちの質問に答え話していくうち篁係長に昔が蘇えったのだろうか。その目は、うっすらと涙が滲んでいるように見えた。
 
居酒屋「漁り火」の店先
  マイコン 「ご協力感謝します。」
  刑事たちは早速捜査を開始した。喜多刑事(寺尾  聡)とマイコン(石原 良純)は清文の証言にあった居酒屋「漁り火」を訪れ、清文が言った証言の裏付けを確認し、店を出てきた。
  マイコン 「係長、息子さんが嘘ついてたなんていってたけど、ちゃんと会ってねじゃないですか。日にちも時間もピッタリ。やぁ、息子さんこの店の常連ですし、店の人の記憶が違うわけありませんよ。」
  喜多刑事 「但し、話していた内容は誰にも分からん。」
 
清文の実家
  二人の刑事は次に、清文の実家を尋ねた。そこには清文の育ての母である美沙子がいる。
美沙子 「それで、清文が何か?。」
喜多刑事 「竹内久夫という男、ご存知ですか?。」
美沙子 「竹内久夫様ですか。」
喜多刑事 「ええ。」
  美沙子 「ふぅー。いいえ、存じませんが。」
  喜多刑事 「その竹内さん、夕べ殺されましてね。」
  美沙子 「え!。」
  マイコン 「遺体を発見したのが、その男を訪問した清文さんなんです。」
  美沙子 「はぁ、あ、清文さんが!。」
  喜多刑事 「彼は偶然飲み屋で知り合ったと言ってますが、電話でも掛かってきた事ありませんか?。」
  美沙子 「いえ、覚えがありません。」
  喜多刑事 「そうですか。」
  内容は分からないが、事件に自分の息子・清文が巻き込まれていることを知らされた母・美沙子は動揺を隠せなかった。
近所を走る鉄道に、電車が走りぬけていった。
 
清文の実家、玄関前
  美沙子との話しを済ませ、玄関門の脇にある小さな木戸からふたりの刑事が出てきた。
  マイコン 「喜多さん!。」
  喜多刑事 「あん!。」
  マイコン 「こう言っちゃなんですけど、係長とはまったく正反対逆のタイプですね。」
  喜多刑事 「そうかな?。」
  マイコン 「あっそうか!おんなしタイプだったら、再婚する必要無いですもんね。」
  喜多刑事 「君、君は再婚(サイコン)評論家かい?。」
  マイコン 「マイコンです。」
  喜多刑事 「あっ、そう。行こ。」
  そして玄関前に止めてあった車に乗り、二人の刑事はその場を後にした。
 
殺害された竹内の部屋
  一方、他の刑事たちも捜査を進めている。
ドックは、殺人現場となった竹内の家を訪れていた。
  ドック 「あぁあ、現場百回っていうのは、どうも俺の柄じゃないな。」
古いタンスの中にある引出しの中を確認しようとするが、歪んでいるのかうまく引けない。ドックは思いっきり力ずくで引出しを引っ張ると、引出しの下から封筒を発見、中には一枚の新聞記事のようなが入っていた。それは美術書の切れ端だった。ドックのその紙を手に取り読み上げた。
ドック 「昭和34年度青龍展油絵部門佳作、田坂圭吾。・・・なんでこんなもん、とってあるんだよ。昭和10年青森県出身。・・・?。あれ?、竹内も青森県出身で51歳。」
 
七曲署捜査一係室内
  ドックは竹内の部屋から見つけたその美術書の切れ端から、何かを掴んだようだ。テープルの上に白黒の二枚の写真をならべると、部屋にいた野崎刑事・喜多刑事・マイコンに自分の掴んだものを話し始めた。
二枚の写真・・・。一枚はドックが発見した美術書の切れ端に掲載されていた、田坂圭吾なる人物の写真を拡大したもの。もう一枚は、殺された竹内久夫であった。
  ドック 「こっちが、メガネを外した現在の竹内。そして、美術書の写真を拡大したものです。いいですか!。」
  そういうとドックは手にしていた黒マジックを竹内の写真に滑らせ、今は薄くなっている竹内の頭髪を黒く塗り始めた。また田坂圭吾には顎鬚があり、ドックは竹内の写真にも同じようにマジックで顎鬚を描いた。
するとその二枚の写真は同一人物になったのだ。
  野崎刑事 「なるほど、こりゃ驚いたな。」
  マイコン 「ホント、そっくりですよ。」
  ドック 「その美術誌の編集部の話しじゃ、田坂圭吾、本名:竹内久夫は青龍展の佳作に入った昭和34年頃は、一部で注目された新進画家でした。」
  野崎刑事 「うーん。」
  ドック 「ところがその後はまったく鳴かず飛ばずで、いつのまにか画壇から姿を消してしまったんだそうです。」
  マイコン 「この男に・・・、こんな過去があったとはな。」
  その時、一係の無線が鳴った。
  野崎刑事 「おっ!。」
  野崎刑事は立ちあがり、無線に答えた。
  野崎刑事 「野崎だ。」
  ブルース 「澤村ですが。」(無線から声)
  それは捜査活動中のブルースからであった。
 
竹内殺害の凶器が発見されたどぶ川
  ブルース 「どぶ川から凶器らしきものを発見しました。」
  野崎刑事 「なにー。」(無線の声)
  ブルース 「バールですな。これからあのー、鑑識に廻しますから。」
  野崎刑事 「分かった、頼む。(無線の声)」
  ブルース 「了解!。」
ブルースとDJは殺人に使われた凶器を発見すべく、署の捜査員とともに近所の川をどぶさらいしていたのである。そしてその地道な活動の成果で、凶器と思われるものを発見したのだ。
ブルースが手にしているその凶器と思われる真新しいバールには、生々しく血痕が付着していた。

ブルースは野崎刑事に一係に報告を済ませると鑑識に向かうため、まだ下の川でどぶさらいを続けているDJに声を掛けた。
  ブルース 「おいDJ!。鑑識行ってくるからよ。」
  DJ 「えっ!。」
  ブルース 「鑑識だよ、鑑識、どアホ!。」
  DJ 「あっ、俺も行くよ。」
  ブルース 「お前、まだ探してろよ。頼んだぞー。」
  そう言うとブルースは、足早にさっさと行ってしまった。
  DJ 「それさー、俺見つけたんだけどー。」
 
捜査活動中の井川刑事・マミー(車の中)
  発見された凶器とその鑑識の結果は、やはり別行動で捜査活動を続けている井川刑事とマミー(長谷 直美)へも伝えられた。
  井川刑事 「血液型が一致したんですか?。」
  野崎刑事 「あぁ、凶器に間違いない。但し、指紋は検出されなかった。(無線の声)」
  井川刑事 「そうですか、分かりました。」