アップロード300話達成・記念特別編集



第12話  「さらば!七曲署」





あるマンションの一室・殺人事件現場
殺人事件が発生した。現場に急行した七曲署捜査一係刑事、井川刑事(地井武男)・ブルース(又野誠治)・DJ(西山浩二)の3名。被害者は床にうつ伏せで倒れており、後頭部からは出血した跡があった。
ブルース 「トシさん。」
井川刑事 「あぁ!。」
  ブルース 「被害者は竹内久夫さん、51歳。独り暮らしです。」
  井川刑事 「額を割られている。凶器はなにか固い、鈍器のようなものだろう。」
  そういうと井川刑事は右側の人物に目をやり、目の前に歩み寄ってきたDJに質問した。
  井川刑事 「発見者か。」
  DJ 「えぇ、被害者の知り合いでここに遊びにきた時、この発見したといっております。」
  DJからり報告を聞くと井川刑事は、玄関先に立っている第一発見者の男性のところまで近づき声を掛けた。
  井川刑事 「すみませんが、七曲署の井川です。失礼ですが、お名前を・・・。」
  玄関先で事件現場に背を向けて立っていた男性は井川刑事に声を掛けられ、ゆっくりと顔を井川刑事の方に向けた。
  清文 「青木清文といいます。」
  井川刑事 「青木清文さん。どんな字ですか?。」
  清文 「青い木に、清い文・・・。」
  井川刑事 「あぁ・・・、はい。」
  清文 「あのー。」
  井川刑事 「はっ。」
  清文 「名字は違いますけど、篁 朝子の息子です。」
  井川刑事 「篁 朝子?。・・・係長の!。」
  青木清文と名乗る第一発見者の男は、篁係長(奈良岡朋子)の息子だという。それを聞いた井川刑事はもちろん、側で聞いていたブルース・DJらは一応に驚いた。
 
七曲署捜査一係室内
  書類に目を通していた篁係長の元に、一係の扉を開いて清文が静かに歩み寄ってくる。目の前にきた時篁係長は顔を上げ、清文に気がつくと静かに椅子から腰を上げた。しかしすぐに言葉は出てこなかった。
篁係長 「・・・・・・、久し振りね。」
清文 「ええ、元気そうですね、母さん。」
篁係長 「あなたも。お父さんも元気?。」
清文 「ええ、今度、大臣に随行してカナダにいくそうです。」
  篁係長 「そう。・・・美沙子さんは?。」
  清文 「母も・・・!。」
  清文はそう言いかけると、バツが悪そうに言葉を止めた。それをすぐに察した篁係長は清文に笑顔で言った。
  篁係長 「あっ、いいのよ。今は貴方のお母さんなんだから。」
  そう言われ、バツが悪く下を向いていた清文であったが素直に答えた。
  清文 「元気です。一度、母さんに会いたがってました。」
  篁係長 「そう。」
  同じく部屋にいた井川刑事は気をきかせてお茶を入れ、係長席の前にある応接セットまで運んだ。
やはり部屋の中にいた野崎刑事(下川辰平)はその様子を確認すると篁係長たちに近づき、割って声を掛けた。
  野崎刑事 「係長、それじゃぁ我々はこれで。」
  篁係長 「いいのよ。二人で事情聴取してちょうだい。」
  野崎刑事 「・・・あー、あぁ、そうですか。それじゃすみません青木さん、こちらへ。」
  野崎刑事は久し振りの親子の対面を果たした篁係長に気をつかったが、篁係長にとってそれとこれは別、毅然とした態度で通常通りの任務を果たすよう指示をした。
篁係長の指示に野崎刑事遠慮がちに左腕で係長席の前にあるソファーを指し、清文を誘導するのだった。
  野崎刑事 「さあ、どうぞ。」
  野崎刑事に指示され、清文がソファーに腰を下ろす。併せてソファーの側に立っていた井川刑事と野崎刑事が清文の対面に腰掛けた。
その様子を心配そうに見ていた篁係長は、この時少し母親の顔をのぞかせた。
  野崎刑事 「えーと、お勤めは東和証券でしたね。」
  清文 「はい。」
  野崎刑事 「亡くなった、竹内さんとの関係を教えて頂けませんか。」
  清文 「えっ、えぇ、なんと言っていいか。友達です。」
  井川刑事 「友達?。」
  清文 「先週の金曜日、飲み屋で知り合ったばっかりなんです。」
  野崎刑事 「ほぉー、飲み屋で?。」
  清文 「店が混んでいるうちに相席になって、色々話しているうちに親しくなったんです。」
  野崎刑事 「ふぅーん。」
質問に答えながら出されたお茶を口にする清文。その様子を、実の母でもある篁係長が見ていた。その目は母の目ではなく、刑事としての目であった。お茶を口に含み顔を上げた清文は、自分をジーっと見ている篁係長に気がつくと、とっさに目をそらし持っていた茶碗をおろしたのだった。
井川刑事 「しかし、まぁー、こう言っては何ですが、相手は小さな印刷会社の主人で、年齢(とし)もかなり違うでしょう。あまり話題が合うとは思えないんですがね。」
  清文 「そういうのは関係ないんです。ただ、なんとなく話しが合って。」
  野崎刑事 「あー、なるほど。うー、そういう事もありますな。」
  刑事たちの質問に素直に答える清文ではあったが、野崎刑事と井川刑事の間からこちらを見ていてる篁係長を明らかに気にしていた。清文は時折顔を上げるが、篁係長と目が合う度に目線をそらした。
質問していた野崎刑事たちもやりづらいのだろう。それに気づいたのか篁係長は机の上に広がっていた書類をたたむと、野崎刑事たちに声を掛けた。
  野崎刑事 「はあー。」
  篁係長 「野崎さん、井川さん、あと、お願します。」
  野崎刑事 「あっ。」
  篁係長 「あたしがいない方がいいでしょう。」
  野崎刑事 「あっ、いやー。」
  席を立った篁係長はすばやく自分の荷物を手に取ると、さっさと部屋の出入口に向かって歩き始めていった。
  篁係長 「それじゃ、お願します。」
  井川刑事 「あっ、お疲れ様です。」
  野崎刑事 「ご苦労様でした。」
  部屋を出て行く篁係長。井川刑事がソファーから立ち上がってお辞儀をするが、清文は篁係長の方を見ようともしない。篁係長もまた、再び清文に声を掛けること無く部屋を出ていった。
 
七曲署、一係の入り口前の廊下
部屋を出た篁係長はドアの前で深くため息を吐いた。そして気になる様子を振り切り一係を後にした。
 
 
再び一係の室内
  篁係長が退席し、一係室では引続き野崎刑事、井川刑事によって、清文への事情聴取が続けられた。
  野崎刑事 「その店の名前と、竹内さんとあった時刻を教えて下さい。」
  清文 「新宿の漁り火というお店です。時間は夜の7時ごろです。」
  井川刑事 「新宿の漁り火、夜の7時ごろですね。それで今日、竹内さんのところに遊びにいったわけですか?。」
  清文 「はい、その時、今度遊びに来いと言われまして、・・・それで。」
  野崎刑事 「遺体を発見した時の様子を話して下さい。」
  清文 「ついたのは午後6時半頃です。会社を出る時電話をしておいたので、居るいるのは分かってました。」
 
(回想) 竹内の事務所
明かりも灯さず薄暗い竹内の事務所に入ってきた清文。そのまま足を進め奥の部屋の前で声を掛けた。
清文 「竹内さん、青木です。」
そう言うと清文は事務所から部屋に上がり込むところにある襖に手を描け引いた。そして目に飛び込んできたのは、額から血を流して倒れている竹内の遺体であった。
 
再び一係の室内
  清文 「ビックリして抱き起こしたんですけど・・・。その時はもう無くなってました。」
  遺体発見の時の様子を思い出し、口調が激しくなる清文。その清文が手にしているコートに手を伸ばし、野崎刑事は尋ねた。
  野崎刑事 「このコートの血は、その時に着いたんですか?。」
 
清文のアパートの前
  清文を乗せた井川刑事の車が清文のアパートの前で止まった。車をおりる井川刑事と清文。井川刑事は清文を自宅まで送り届けたのだ。その井川刑事に清文は礼を言った。
  清文 「どうも・・・・・・、有り難うございました。」
  清文の言葉に井川刑事も一礼をすると、再び車に乗りこみ走り去っていった。その姿がしばらく見ていた清文であった。