| これで三度目であった。麻薬の精製基地を捜し出して踏込むと、そこはもぬけの殻なのである。どうやら警察側で麻薬捜査に情報を漏らしている人間がいるらしい。山村刑事(露口 茂)がそのことを口にした時、一人の刑事の顔色が変わったのを見逃さなかった。山村刑事はその若い刑事・伊藤に近づくと腕をねじ上げた。そこには麻薬の注射跡があったのである。一係の刑事たちは、思わず逃げる伊藤を追いかけたが、それを影から見ている麻薬組織の男の姿があった。翌日、伊東は死体となって発見された。 その後、島刑事(小野寺 昭)は久しぶりの休日を恋人の麻江と近くの喫茶店で過ごしていた。麻江が帰ったのちは過労のためめかその場で倒れ込んでしまい、気がついた時はその店のママ・紀子の部屋であった。彼女はかかりつけの医者・高橋を呼び、栄養剤を打ってもらったところだと語った。島刑事は彼女の親切を不思議に思い、それを訪ねると彼女は笑って、二人が一緒に写っている子供時代の写真を見せた。島刑事は紀子が幼なじみである事を思い出した。しかし今から思うと、彼女のこの行為が危険な罠であった。 一向に具合が良くならない島刑事は高橋医院をしばしば訪ねたが、そこで注射を打たれると必ずしばらくの間、気を失ってしまうのを不審に思った。自分は麻薬を打たれているのではないかという思いが島刑事を襲う。浮かない顔の島刑事に気付いた山村刑事は彼に声を掛け、二人は紀子の店に入った。何度も島刑事は自分の抱いた疑惑を山村刑事に話そうとしたが、紀子の存在を気にして遂に話すことが出来なかったまま別れてしまう。 数日後、身体の具合が悪い事を理由に島刑事は休暇を取り紀子の部屋を訪ねた。彼女は気持ちよく島刑事を部屋に通したが、彼に隠れて誰かと連絡を取っているようである。そのうち彼女の様子が変わった。麻薬の禁断症状が出たのである。紀子を問い詰める島刑事の背後に人影が近づき、島刑事は殴られ、気を失ってしまう。 一方、一係では捜査が進み、麻薬顧客の顧客リストを手に入れていた。そこに紀子の名前があったのである。山村刑事は島刑事の身の危険を感じた。さらに島刑事がかかっていた高橋が無免許のニセ医者だということが判り、島刑事の危険は確実なものとなった。山村刑事はシンコ(関根 恵子)を連れて急いで紀子の部屋へと向かったが、時はすでに遅く、二人が見たものは隅にころがっていた島刑事のネクタイピンと広げられたままの注射器のセットであった。山村刑事はすべてを悟った。そして一係の刑事たちは悲痛な面持ちで島刑事の捜索にあたった。石塚刑事(竜 雷太)とジーパン(故 松田 優作)は密売組織の人間に化け、ニセ医者・高橋にあたかも殺しに来たかのように見せ、組織のボスに確認の電話を入れさせた。そこで石塚刑事は島刑事の監禁場所の電話番号を読み取ったのである。 その頃島刑事は、監禁されながら麻薬を打ち続けられ、殺された伊藤の変わりに密告者に仕立てられようとしていた。拒み続ける島刑事に主犯の中尾らは、非情にも彼の恋人・麻江にも手を出すと脅した。 事件を知った麻江は島刑事のことが気になりながらも、間近に控えた保母をしている幼稚園の発表会のために、鶴を折り続けていた。不思議な事に島刑事もその時、暗い地下室でひとり麻薬の包み紙で鶴を折っていたのである。やっとの思いで島刑事は天窓の隙間から外へと飛ばした。それを拾ったのが山村刑事である。鶴に麻薬の粉がついている事に気付いた山村刑事は他の刑事と共に地下室へと飛び込んでいった。激しい物音で仲間が来てくれた事を悟った島刑事は外へ逃げ出そうとするが、拳銃をもった中尾に行く手を遮られてしまう。絶体絶命のその一瞬、紀子は中尾を突き飛ばし、島刑事を助けようとして息絶えるのだった。 そして中尾は逮捕されたものの、島刑事は禁断症状に襲われ、置き忘れられていた薬に手を出そうとしていた。それを影から見ていた山村刑事が静かに声を掛けた。島刑事はハッとなり手を引っ込めたが、紀子の事を話さなかったという自責の念は、彼をクスリへと誘ってしまうのだ。しかし、彼女は島刑事を助ける事で汚れてしまった自分を救いたかったのだと山村刑事に諭されると、自分の中にある魔の手と闘う事を決心する。島刑事は山村刑事に自分を縛るように頼むが、だんだんと辛くなろうてある苦しみを一緒に分かち合おうと山村刑事は、手錠を自分と島刑事の腕に掛けるのだった。 暴れ狂う島刑事に引きずられ、山村刑事の手首から血が流れ出す。表では聞こえてくる激しい叫び声に麻江が、そして他の刑事たちが祈るように成り行きを見守っていた。 やがて夜が明け、静かになった地下室の中から山村刑事が出てくると、島刑事の無事を伝えた。長い一日が終わった。島刑事の受けた傷は大きいが、信頼の出来る仲間たちに囲まれ、いつかはきっと癒えるであろう。 |